「昭和ドキドキ」(戦争の記憶を後世に伝えるためのサイト)で紹介 020
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「広島 昭和20年8月6日」 TBS・涙そうそうプロジェクト
広島県産業奨励館をセットで再現 (原爆ドーム 破壊前)
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これはTBSが「涙そうそうプロジェクト」と称して、視聴者より涙がとまらない体験を募集し、その応募作の中からテレビドラマ化したものである。
本サイトでは「戦争と庶民」をキーワードとした感動的な小説ほかを紹介している。戦争体験のまったくない平和な時代に育った人々に訴えるにはどうすればよいのだろうか?小説のような文字ではなく、テレビドラマとして映像で訴えることは優れた訴求力をもっていることがわかる。心に残る作品である。
最初の場面は一人の老人(西田敏行)が修学旅行の生徒たちを相手に60年前の夏の日の話をしている。場所は広島の平和記念公園、被爆前のこの地は落ち着いた街で民家や商店が建ち並んでいた。庶民の平和な暮らしが営まれていた。そこに両親を亡くした4人の姉弟が助け合って暮らしていた。
このドラマは原爆投下までの20日を取り上げている。アメリカの為政者たちは原爆投下の決断を下し、その場所を広島と決め淡々と実行に移していく。もうすぐ平和な生活は消滅してしまうのだが、庶民はそれをつゆ知らず、懸命に生きている。原爆を搭載したエノラゲイとして知られている悪魔の飛行機が飛び立ち、刻々と広島に近づく描き方に感心する。アメリカ側の悪魔の動きと広島での姉妹の恋愛物語や軍部へのささやかな抵抗物語などが少しずつ同時進行する。やがて来る運命の瞬間を知っているものにはいたたまれぬ感情を引き出すことに成功している。
このドラマを情感深いものに仕上げているのは、出演者の熱演にもよるが、原爆ドーム(広島県産業奨励館)や街並みをセットで巧みに復元したためであろう。 平和公園に灯された火は、世界中から核兵器がなくなったら消されるという。その日が来ることを願ってやまない。
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