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潮合一歩   ミニ小説 『認知症検査』 


2015.08.06
名古屋市在住 

「認知症検査」     潮合一歩

 

俺なあ、認知症の検査を受けることになったのさ。

高速道路の逆走なんぞ、やったことないのにさ。

どんな検査か興味津津だった。脳味噌のレントゲンを撮るのかな。

ところがな、医者がいろいろ聞いてくるのに答えるだけなんだ。

まずお名前はというから、シオアイと答えると、

奴の頭には対応する漢字がなかったのか、まあいいやと奴は言ったのだ。


ついで今日は何月何日ですか。と聞かれたけれど、その医者の背後に

カレンダーが貼ってあるではないか。答える気がしなくなった。

今日は何曜日ですか、俺は無職で毎日が日曜日だから、日曜日と答えた。

昨日は何曜日でしたかと聞くから、昨日も日曜日だった。と答えたものだ。

記憶力テストがあった。イラストを12枚ばかり見せた後で、

それらを思い出せるかどうかという検査らしい。

俺は記憶力は異常に良好なので、スラスラと全てを提示順に答えてやった。

動物のイラストが上手くないと余計なコメントを返してやった。

俺に言わせると、反抗的な奴は認知症ではない。だから俺は認知症ではない。

「認知症」という用語が気に入らない。「ボケ老人」のほうがわかりやすい。

判定は再検査であった。何だ、この医者も反抗的じゃないか。

だから奴も俺も認知症ではない。ボケではあるが。