戻る

  随想 『新米教師の第一歩 
       ー大内山のあれこれー』

山神徳子

 教員人生の第一歩の日の様子が詳しく書かれている。
勤務先は三重県度会郡大内山村の大内山中学校。時代は昭和29年の4月である。日本はまだ戦後の混乱期にある。
 とりわけ住宅事情が悪く、教員住宅は一棟しかなくここには他の先生が入居していた。
それで最初の宿泊先はなんと校長先生のお宅になった。一日中校長に監視されているのは堪ったものではない。
その後、間借り自炊生活に入る。そこで気の合う同年齢の女性に出会い、楽しい生活が始まるのだが、彼女は満州からの引揚者で苦労を重ねた人だったので教えられることも多かったようだ。
学生時代と違って、色んな人に出会い、主人公は対人関係によって成長していくことが感じられるようになった。

 この時代のことをよく知らない現代の若い人にも読んでいただきたい随想である。(森本正昭)