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  随想 『戦中派のアーカイブ』
61~84頁
西村壽郎
 

 2年前の27号から昨年の28号にかけて、自分史とも言うべき小説『愚直の果て(前編)と(後編)』を発表した。前編は戦時下の学生時代の体験が書かれていた。後編は戦後になって、農業で家族を養っていく苦闘の歴史が書かれていた。とりわけ父親との意見の対立を乗り越えていくところに力点が置かれている。大変力の入った小説である。本号はその余録となる作品であろうか、肩の力が抜けている。余裕で知識の限りを披瀝しているように見える。
テーマは二つあって、政治と戦争の問題。ただし西村さんの政治的立ち位置は右翼である。もう一つはノーベル賞に関するものである。
 西村氏は三重県度会郡度会町に定住し、昼は農業に従事し、夜は読書と執筆に努めた。大変な努力家である。ノーベル賞に関する物語は、どこでこれだけの知識を獲得されたのか不思議なくらいである。
 関心のある方はぜひご覧いただきたい。(森本正昭 記)

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